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愚痴を書くブログ

部下愛

僕の職場には学生のバイトの子たちも結構たくさん来てくれていて、1年目の新入社員ながらも社員である以上はそういった学生の子たちを指揮したり管理したりしなきゃならないポジションに置かされている。大変と言えばまあ大変であるが、そこに関してはどちらかというと楽しさのほうが強い。上司や年上のバイトには恐縮しちゃうけど、僕も社会人とは言え去年までずっと学生をやってきたわけで、現場がふっと「学生のバイト」の雰囲気に包みこまれる瞬間があると、そこはやはりとっても居心地がいい。僕と数人の学生とでチームを組んで和気あいあいと作業に取り組んでいる瞬間が、仕事中唯一と言ってもいいほど楽しい瞬間である。余談だが先月、仕事中に学生の一人が「手足がしびれて頭が痛い」と言って救急搬送された時は脳梗塞とかで死んじゃうんじゃないかと思って心配したが、3日後ぐらいにケロッと職場復帰して面白かったのでそれ以降何かとそのことでイジっている。

「先輩にも後輩にも『ありがとう』を欠かさない」ことを去年ぐらいから密かにモットーとしている。目上の人や先輩に「ありがとうございます」を言うのは当然である。上司や先輩のやり方に不満が募ることはあるが、困った時に助けてくれたり、失敗したことを代わりに責任をとってくれたりするのはいつも目上の人間。だから感謝の気持ちを切らしてはならない。自分より立場が上の人間に「いい顔をする」のは大抵の人ならできるはずだから、本音はどうあれ、目上の人間に対する態度を良くしていこうと考えるのは自然なことである。よっぽど社会や大人に対して不満を募らせた反骨精神むきだしのヤンキーとかでなければ、だが。

でも逆に、目下の人間に素直に「ありがとう」を言える人ってそんなに多くないんじゃないかなと思う。「いい顔をする」ことはできるかもれないけれど。「ありがとう」は「有り難う」と書き、わざわざ自分のためにこんなことをしてくれるなんて事例はそうそう無い(有り難い)ことなので、あなたには感謝してもしきれないけれど、せめて感謝の気持ちだけでも示したいという気持ちを込めて言葉にするもの。そう考えると、例えば「目下の人間が目上の人間を敬うのが当然」という考えがあるならば、「ありがとう」という言葉は生まれないと思う。

すごいスケールのでかい話になるけど、人間とは本来みんな平等であるべきものだと思うのである。年齢が上か下か、学年が上か下か、職位が上か下か、実力が上か下か、賃金が上か下か、いろいろな尺度で目上と目下の関係が「一応決められてる」けど、その関係はあくまで「その場での関係」でしか無い。例えば職場の後輩が実はすごいスノボとかの才能があったりしたら、その世界に行けば僕なんてのはとんでもないシロウトだったりするわけだし、逆に僕が上司に対して絶対に負けないものだってきっとある。僕が単なる仕事ができるかできないか(キャリア、職位)の違いのために上司に頭を下げている間にも、世界のどこかでは例えばジャンプの飛距離が長いか短いかでメダルや報奨金が貰えるかどうかが決められているように、その時と場所によって全く違った尺度で立場が決められているわけである。人間の価値とは見る角度によってどのようにも評価できる。だから安易に「人」それ自体を見下すような態度をとったり、逆に媚びるような態度をとったり、値踏みするような行為は間違い、というか、ただただ愚かなものだと思うのだ。

仕事上での自分の評価を決めるのは上司であるとはいえど、やはり上司と同様に部下も大事にしなければならない存在だと思う。どちらのほうが、ではなく、「同様に」だ。だから、僕に対して上司が、その経験や知識の多さをもって「諭す」ような態度はすんなり受け入れられるけれど、例えば高圧的であったり、恐縮させたり、立場の差を利用して強引に「是」と言わせるような態度には反感をもってしまう。いくら言っていることが正しくても。

逆に僕が目上の人間である場面でも、極力、相手を恐縮させないような付き合い方をしていたいと思う。もちろん、目上の人間に対して「一歩引く」ことを覚えさせる教育は重要である。けれど、そこは態度ではなく仕事の出来栄えであったり、目下の人間の一歩二歩上をゆく「実力」の差を示してやることによって黙って相手に思い知らせるべきだと思う。高圧的であったり、相手を委縮させるような態度は、目上の人間に無意味に媚びたり、より目下の人間は相対的に切り捨てたりするような「値踏み」を目下の人間に強いることになるのではないか。目上の人間が「値踏み」するような態度をとることは、結果としてまた「値踏み」をよしとする目下の人間を生み出してしまうことになり、よくない。

だから、職場の学生たちと一緒になってタスクを達成した時には、形としてはそれを指揮した僕の「成果」になるわけだけれど、そこで一生懸命になって取り組んでくれた学生の一人一人に「ありがとう」を言わなきゃならないと思う。後片付けや単純作業を指示する時も「目下の人間なのだからそれをやって当たり前」ではなく、「申し訳ないけれど今回はあなたにお願いします」の言葉添えを忘れないようにしたい。

たかが仕事での上下関係を強調しすぎることは本当にくだらない。